車は普段の足や通勤・買い物など。様々な面で便利に使うことができます。しかし、中には不注意から運転を誤ったり。ちょっとした慢心から調子に乗った運転を繰り返す方もいる事でしょう。
ですが、安全を怠った運転は時に人を負傷させたり死亡させることで過失運転致死傷罪や危険運転致死傷罪に問われる危険性があります。
2つの死傷罪にはいったいどのような違いがあるのでしょうか?また、その時に課される刑罰・違反点数はどの程度なのか。今回はそんな過失運転致死傷罪・危険運転致死傷罪について、2つの違いや刑罰・違反点数など詳しくまとめてみました。

後半では違反の危険性や防ぐ対策などもお伝えしているので最後まで読んでみてください。
過失運転致死傷罪・危険運転致死傷罪の違い
結論から言えば、過失運転致死傷罪・危険運転致死傷罪の違いは不注意か故意的(悪質)かの違いになります。
過失運転致死傷罪は、正常な運転が困難にも
かかわらず運転して人を負傷または死亡させること。
例えば例として飲酒や薬物の影響を受けた状態で運転をする。これが正常な運転が困難な状態に当てはまります。なおかつその状態で運転をすることで正常な判断ができなくなるので、人を負傷または死亡に追いやるリスクがあります。その結果として違反になるのが【過失運転致死傷罪】。
その一方で危険運転致死傷罪は、自分の運転が故意的に危険と判断された場合に該当する違反。
例えば酩酊(めいてい)状態での運転や高速域の運転。
酩酊状態や高速域の運転は事前にどのような未来になるか想像ができるので、実行して運転すると悪質と判断されます。人を負傷または死亡させるリスクが高い。その結果として違反になるのが【危険運転致死傷罪】。当然危険運転致死傷罪の方が悪質なので、過失運転致死傷罪よりも重い刑罰となります。

過失運転致死傷罪は、不注意により事故を起こして人を負傷または死亡させる。危険運転致死傷罪は悪質な運転を繰り返した末に事故を起こして人を負傷または死亡させる違反と言う事を覚えておきましょう。
過失運転致死傷罪の刑罰・違反点数
過失運転致死傷罪になった場合は
懲役もしくは罰金の支払い・減点が課せられます。
過失運転致死傷罪の刑罰
懲役 | 7年以下の懲役もしくは禁錮 |
罰金 | 100万円以下の罰金 |
まず懲役もしくは禁錮。罰金いずれかの選択肢があります。
①~③いずれかの方法で罰を受けることになります。
違反点数は基礎点数+追加点数
基本点数 | 酒気帯び運転(0.25mg以上) 25点 酒気帯び運転(0.15mg以上0.25mg未満) 13点 過労運転等 25点 無車検や無保険運行 6点 横断歩行者等妨害等 2点 信号無視 2点 通行禁止違反 2点 指定場所一時不停止等 2点 速度違反50km以上 12点 30km以上50km未満(一般道) 6点 40km以上50km未満(高速道等) 6点 30km以上40km未満(高速道等) 3点 25km以上30km未満 3点 20km以上25km未満 2点 20km未満 1点 座席ベルト装着義務違反 1点 |
追加点数 | 違反行為者の不注意の場合 ・治療期間3か月以上または後遺障害 13点 ・治療期間30日以上3か月未満 9点 ・治療期間15日以上30日未満 6点 ・治療期間15日未満 3点 その他 |
違反点数については基礎点数+追加点数の合計が減点数となります。
たとえば基本点数が
・過労運転等 25点
・治療期間3か月以上または後遺障害 13点
25点+13点=38点。この場合、免停ではなく免許取り消しになるので欠格期間を経過した後に再取得の流れとなります。
欠格期間 | 前歴 | |||
---|---|---|---|---|
なし | 1回 | 2回 | 3回以上 | |
1年 | 15〜24 | 10〜19 | 5〜14 | 4〜9 |
2年 | 25〜34 | 20〜19 | 15〜24 | 10〜19 |
3年 | 35〜39 | 30〜34 | 25〜29 | 20〜24 |
4年 | 40〜44 | 35〜39 | 30〜34 | 25〜29 |
5年 | 45〜 | 40〜 | 35〜 | 30〜 |

実際に38点を確認すると3年となるので、免許取り消しから3年間は再取得ができないことになります。
危険運転致死傷罪の刑罰・違反点数
危険運転致死傷罪になった場合は
懲役もしくは罰金の支払い・減点が課せられます。
危険運転致死傷罪の刑罰
自動車運転処罰法第2条 | ・人を負傷させた場合は15年以下の懲役 ・人を死亡させた場合は1年以上の有期懲役 ※有期懲役は期間の定まっている懲役で、1か月以上20年以下の期間の定めがあります。 |
自動車運転処罰法第3条 | ・人を負傷させた場合は12年以下の懲役 ・人を死亡させた場合は15年以下の懲役 |
危険運転致死傷罪は罰金刑はないものの、自動車運転処罰法により負傷もしくは死亡で懲役となります。
人や車の通行妨害する目的で運転
制御困難なスピードで走行
制御技能を持たずに運転
通行禁止の道路を危険な速度で走行
赤信号無視の危険な速度で走行
特定の病気の影響下で運転

自動車運転処罰法は上記2つが当てはまり、負傷や死亡の懲役が該当します。
違反点数は基礎点数+追加点数
危険運転致死 | 62点 |
危険運転致傷(治療期間3か月以上または後遺障害) | 55点 |
危険運転致傷(治療期間30日以上3か月未満) | 51点 |
危険運転致傷(治療期間15日以上30日未満) | 48点 |
危険運転致傷(治療期間15日未満) | 45点 |
危険運転致死傷罪の違反点数は致死もしくは致傷に応じて変わります。また、免許取り消しに加えて欠格期間が設けられます。
前歴(回数) | 0回 | 1回 | 2回 | 3回 |
累積点数45~49点 | 欠格5年 | 欠格6年 | 欠格7年 | 欠格8年 |
50~54点 | 欠格6年 | 欠格7年 | 欠格8年 | 欠格9年 |
55~59点 | 欠格7年 | 欠格8年 | 欠格9年 | 欠格10年 |
60~64点 | 欠格8年 | 欠格9年 | 欠格10年 | 欠格10年 |
65~69点 | 欠格9年 | 欠格10年 | 欠格10年 | 欠格10年 |
70点以上 | 欠格10年 | 欠格10年 | 欠格10年 | 欠格10年 |
例えば前歴は1回で危険運転致傷(治療期間30日以上3か月未満)を参考にすると。点数は51点。辿ると欠格7年となるので、7年間は免許の再取得ができなくなります。
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違反をすることの危険性
ここからは過失運転致死傷罪・危険運転致死傷罪の危険性について。
点数が元で免許の取り消しになる
懲役や罰金の支払いが必要になる
過失運転致死傷罪 | 危険運転致死傷罪 |
7年以下の懲役もしくは禁錮 | 自動車運転処罰法第2条 ・人を負傷させた場合は15年以下の懲役 ・人を死亡させた場合は1年以上の有期懲役 ※有期懲役は期間の定まっている懲役で、1か月以上20年以下の期間の定めがあります。 |
100万円以下の罰金 | 自動車運転処罰法第3条 ・人を負傷させた場合は12年以下の懲役 ・人を死亡させた場合は15年以下の懲役 |
まず懲役や罰金の支払いが必要になること。
過失運転致死傷罪の場合は、7年以下の懲役もしくは禁錮・100万円以下の罰金が課されます。懲役もしくは禁錮оr罰金を支払う事でそれ以上の罪が増えることがありません。
逆に危険運転致死傷罪の場合は、罰金ではなく懲役となります。自動車運転処罰法という被害者を過失で死傷させた場合に適用される法律。
この場合は2条もしくは3条により、負傷もしくは死傷で1~20年以下の懲役が課されます。

過失運転致死傷罪・危険運転致死傷罪どちらをとっても懲役や罰金になった時点で前科もつくので注意が必要。
点数が元で免許の取り消しになる
もう一つは点数が元で免許の取り消しになる。
一般的な減点で点数がなくなった場合は、免停という30~180日程度の一時的に免許が停止になる程度で済みますが…一定の減点数を超えると免許の取り消しになります。
例えば累積点数6点~8点なら免停期間30日。9~14点なら60日というように。
逆に
欠格期間 | 前歴 | |||
---|---|---|---|---|
なし | 1回 | 2回 | 3回以上 | |
1年 | 15〜24 | 10〜19 | 5〜14 | 4〜9 |
2年 | 25〜34 | 20〜19 | 15〜24 | 10〜19 |
3年 | 35〜39 | 30〜34 | 25〜29 | 20〜24 |
4年 | 40〜44 | 35〜39 | 30〜34 | 25〜29 |
5年 | 45〜 | 40〜 | 35〜 | 30〜 |
前歴(回数) | 0回 | 1回 | 2回 | 3回 |
累積点数45~49点 | 欠格5年 | 欠格6年 | 欠格7年 | 欠格8年 |
50~54点 | 欠格6年 | 欠格7年 | 欠格8年 | 欠格9年 |
55~59点 | 欠格7年 | 欠格8年 | 欠格9年 | 欠格10年 |
60~64点 | 欠格8年 | 欠格9年 | 欠格10年 | 欠格10年 |
65~69点 | 欠格9年 | 欠格10年 | 欠格10年 | 欠格10年 |
70点以上 | 欠格10年 | 欠格10年 | 欠格10年 | 欠格10年 |
基本点数+追加点数で一定数点数が高くなると免許の取り消しとなります。

免許の取り消しに加えて欠格期間が追加されるので、欠格期間が過ぎた後でないと免許の再取得ができなくなります。
過失運転致死傷罪・危険運転致死傷罪にならないために
最後は過失運転致死傷罪・危険運転致死傷罪にならないための対策です。もしこれから先違反を防ぎたい方は参考にしてみてください。
体調や運転に支障がある場合は運転を控える
日ごろから安全運転を心がける
まず日ごろから安全運転を心がけること。そもそもの話ですが、違反になる原因は危険な運転を繰り返すことです。
たとえば
・危険運転致死傷罪は特定の危険な運転をしたことが原因
それぞれ状況に応じて注意を怠ったり。危険とされる運転を実行した結果の事なので、まずは落ち着いて安全運転を心がけることで対策となります。
体調や運転に支障がある場合は運転を控える
もう一つは体調や運転に支障がある場合は運転を控えること。下手に体調の悪い時に運転をすると、注意力が低下して事故を起こしやすくなります。
自分だけなら自滅で済みますが、相手を巻き込んだ事故にでもなった日には取り返しのつかないことになりかねません。

そのため、事故を防ぐためにも体調や運転に支障がある場合は運転を控える事で対策が出来ます。
安全運転を心がけて違反になるのを防ごう
以上、過失運転致死傷罪・危険運転致死傷罪の違いと違反内容についてお伝えしました。
この記事のおさらい。
・懲役 7年以下の懲役もしくは禁錮
・罰金 100万円以下の罰金
・違反点数は基礎点数+追加点数
【危険運転致死傷罪】
自動車運転処罰法第2条
・人を負傷させた場合は15年以下の懲役
・人を死亡させた場合は1年以上の有期懲役
自動車運転処罰法第3条
・人を負傷させた場合は12年以下の懲役
・人を死亡させた場合は15年以下の懲役
点数が元で免許の取り消しになる
体調や運転に支障がある場合は運転を控える
記事でもわかる通り、過失運転致死傷罪・危険運転致死傷罪の違いは不注意か故意的(悪質)かの違いになります。
過失運転致死傷罪は、正常な運転が困難にもかかわらず運転して人を負傷または死亡させること。その一方で危険運転致死傷罪は、自分の運転が故意的に危険と判断された場合に該当する違反。
どちらも似ているように思えますが、故意的という点で危険運転致死傷罪の方が過失運転致死傷罪よりも罪が重くなります。

とはいえどちらも危険な違反であることに変わりはないので、もしこれから先気を付けたい方は普段からの安全運転を心がけて違反になることを防止しましょう。